リターゲティング広告とは? ~基本的なしくみ編~
更新日:2017.02.27
リターゲティング広告とは、一度自分のサイトに訪れたユーザーにマークをつけ、そのユーザーが別のサイトを見ている時にバナーやテキスト広告の表示をするものです。
検索などでサイトを訪問したあと、頻繁に見かける広告は「リターゲティング広告」の仕組みを利用しています。リターゲティング広告は、行動ターゲティング広告や追跡型広告とも呼ばれています。
サイトに訪れたものの購入や問い合わせに至らなかった“見込み顧客”にリーチすることができるので、さまざまなターゲティング方法があるディスプレイ広告の中でも獲得効果が良いというのが特徴です。
リターゲティング広告の仕組みとは
1.Cookieでユーザーにマークをつける
ユーザーがサイトを訪れると、『Cookie』という訪問履歴がユーザーのブラウザに残ります。これが「ユーザーにマークをつける」という行為になります。
Cookieにはユーザーと企業、それぞれへのメリットがあるため、基本的にブラウザはCookieを残すように作られています。
ユーザーとしてはログインパスワードの省略や、住所などの入力を短縮するといったメリットがあります。企業としてはアクセス解析でのユーザーの識別や、リターゲティング広告などを利用できるメリットがあります。
2.Cookieによってユーザーを識別して広告を表示
ユーザーのブラウザにCookieがある状態でサイトを開くと、Cookie情報がサーバーに送信されます。
リターゲティング広告の場合は、GoogleやYahooなどリターゲティング広告の枠を設置しているサイトへ訪問したとき、Cookieが送信されて「どんなサイトを見たユーザーなのか」を識別します。
その識別によって表示する広告を変更しています。
アナログ的な説明
すごくアナログな説明をすると、こんな感じです。
来店したお客さんの背中に「鈴木屋に来店」という張り紙をつけておくのが、Cookieが行っているものです。
リターゲティング広告は、お客さんが張り紙をつけたまま鈴木屋と提携しているお店に来たとき、鈴木屋のチラシを改めて渡してもらうものです。
お客さんは実際に行ったお店のチラシなので、「あの時のお店だ」と気付きます。これをインターネット上でシステム的に行っているのがリターゲティング広告です。
リターゲティング広告には種類がある
リターゲティング広告は、 DSP などディスプレイ広告媒体であれば基本的にどこからでも出稿が可能です。それら数あるディスプレイ媒体から、まず押さえておきたいのがリスティング広告とセットで出稿ができるGoogleとYAHOOです。
Googleディスプレイ広告(GDN)は『リマーケティング』、YAHOOディスプレイ広告(YDN)は『サイトリターゲティング』と呼び方が異なります。それぞれの違いはシステムの使い方の違いと、配信先サイトが違うことです。
ここからは、リターゲティング広告の始め方と、GDN・YDNそれぞれのメリット・デメリットについてお話ししていきます。
リターゲティング広告を始めるには
リターゲティング広告を始めるために、まずはリターゲティング用のタグを設置します。通常のコンバージョンタグとは別に、サイト内のあらゆるページにおいて訪れたユーザーにマークをつけるためのものです。
GDNでのリターゲティングの始め方
管理画面より
「共有ライブラリ」>「ユーザーリスト」>「ウェブサイト訪問者」リマーケティングを設定
⇒タグを発行し、サイト内の指定箇所に設置するとリスト数が反映されます。
YDNでのリターゲティングの始め方
管理画面より
「ツール」>「ターゲットリスト管理」>「サイトリターゲティング用のタグを取得する」
⇒以後GDNと同様
※YDNの場合、スポンサードサーチとはCVタグも異なりますのでご注意ください。
リターゲティング広告の基本
最初に作成する3つのリスト
「全訪問リスト」としてCookieの期間を可能な限り長く設定しておきましょう。後でリストを期間別に切り分けて使用することができます。
また、「購入リスト」も忘れずに設定しておきましょう。こちらは「タグ指定」でCVタグを選択すれば完了です。
リターゲティングの基本は「訪問-購入」リストです。リターゲティングタグによる訪問者リストから、CVタグ指定の購入リストを除外します。
運用開始にあたって行うこと
サイトには訪れたものの、購入に至らなかった「訪問-購入」リストに対し、あらゆる他のWebサイト内で広告を見せて購入を促します。サイト訪問からの経過日数は、時間が経てば経つほど購入の見込み度も低くなりますし、ユーザーの購入意欲も下がっている可能性が高いです。
訪問日数を「直近5日以内」「6~10日」「11~20日」「21~30日」と細かく切り分けることで、広告グループごとに入札単価の微妙な調整が簡単になります。一般的に一番見込みが高いのが、サイト訪問から直近5日以内のユーザーと言われています。このリストはCVRが高く出るケースが非常に多く、入札単価はリストに漏れなく広告表示ができるよう高めに設定します。
デフォルトの「全訪問リスト」は、リターゲティングリストを作成する際に【30日間】、長くとも【60日間】以内に切って使用することをおすすめします。サイト訪問から長く時間が経過したリストまでを敢えて使用したい場合は、訪問から30日以内の“直近リスト”とは別に「60~90日」というようなリストを作成しましょう。それぞれのリストを別の広告グループに分けて掲載することで、効果の比較が可能です。
配信強度の確認と改善方法
リターゲティング広告をはじめ、ディスプレイ広告の配信は、検索連動型広告のように掲載順位では配信の強度を把握できません。この場合は、Googleに限る機能ですが、『ディスプレイ広告のインプレッションシェア』『ディスプレイ広告のインプレッションンシェア損失率(広告ランク)』という2つの指標で確認します。(YDNにはこの機能はありません。)
管理画面「キャンペーン」タブ>「表示項目」>「表示項目を変更」>「競合指標」
⇒カテゴリから上記2項目を追加
『ディスプレイ広告のインプレッションシェア』はパーセンテージが“高い”程よく、『ディスプレイ広告のインプレッションンシェア損失率(広告ランク)』は“低い”程よいということになります。
まずはこの2つの指標数値を確認し、効率良くシェアを取り切れていないならば入札単価の引き上げをします。単価を上げる際に注意しておきたいのは、キャンペーンに設定している1日当たりの予算です。日予算のキャップが効果の配信の伸びを妨げることがないよう、余裕をもって設定しておきましょう。
広告グループによって悪いものもあるため予算を上げられない場合は、悪いグループだけを切り出して新しくキャンペーンを作成します。別々に日予算を管理することで、無駄のない効率的な出稿が可能です。
入札単価や日予算を上げ、良いものだけを残し、それでも残りのシェアを伸ばせなくなった場合、次は損失率に着目します。これは、広告ごとの「品質スコア」改善の余地を意味する指標です。品質スコアの改善にはいくつかの構成要素がありますが、中でも「クリック率」は改善しやすいポイントです。バナー広告の画像やキャッチコピー、オファー企画など、さまざまな訴求をテストし、まずはバナーのクリック率向上に取り組みましょう。
リターゲティング広告のメリット
リターゲティング広告のメリットは、なんといっても「見込み顧客の刈り取り」にあります。一度サイトへ訪れたものの購入には至らなかったユーザーに対し、まったくの別サイトでもバナーやテキスト広告を見せられる幅広いリーチ力で、通常よりも獲得率は大幅に上がります。
検索連動型が“PULL型”だとすれば、リタゲ広告は見込み顧客だけに絞った“PUSH型”配信といえるでしょう。
では、Google・YAHOOそれぞれの特徴を捉えながら各メリットを比較してみます。
GDN リマーケティングのメリット
- 『YouTube』にも掲載が可能
- 配信先のドメインごとのレポートを管理画面上で確認することが可能
- 『Amebaブログ』や『LINEブログ』、その他ビッグポータル掲載面を多く持っている
- アプリへの配信も可能
YDN サイトリターゲティングのメリット
- 『YAHOO!ニュース』や『YAHOO!知恵袋』などY!サービス内に掲載が可能
- テキスト広告であればCPC10円以下など安価での配信も可能
- 幅広い属性へのリーチが見込める
GDNとYDNのどちらを選ぶべきか?
商品属性やサービス内容によって、どのサイトでの獲得が得意なのかは実際に配信をしてみて検証しましょう。GDNは『ディスプレイネットワーク』タブから、YDNは『ツール』の『プレイスメントリスト管理」から、配信ドメイン別に除外設定が可能です。
ただし、ディスプレイ広告の中でも特にリターゲティング配信は、“面”ではなく“人”を選んで広告を表示する仕組みです。除外の目安とするラインは、あまりにも厳しく見ると見込み客にリーチできなくなってしまうリスクもあると覚えておきましょう。
YDNのテキスト広告は、新規リーチを獲得するのに相性が良い低単価です。もし、ビッグワード検索の単価が高騰しすぎていて消極的な出稿に留めている状況ならば、まずは「デモグラ配信(年齢・性別)のテキスト広告で広く安価でリターゲティング用のマークを溜める」というのも一つの手です。掲載先がYAHOO!ニュースや知恵袋内が多いため、広く優良な見込み客にリーチすることが可能ですし、一度クリックをしてサイトを見ているという点でも、リターゲティングに期待できる効果は検索連動と大差はありません。
運用しながら選択していくのがベター
GDNとYDNでは、同じサービス・同じリターゲティング広告でも効果に差が出ることがあります。検索連動広告の予算分布や獲得状況を参考にしながら、まずはCPCを抑えめに入札をし、初動を見ながら運用調整をしていきましょう。
ディスプレイ広告は、検索連動のキーワード入札とは若干異なり、1円単位で配信規模が大きくこともあります。突然の配信ボリューム増に不安がある場合は、2~3円ずつ引き上げ初動はしっかり見守っておくことをおすすめします。
リターゲティング広告のデメリット
GDN リマーケティングのデメリット
・配信先「anonymous.google」が実際にどのドメインなのか不明
YDN サイトリターゲティングのデメリット
・CVリストをスポンサードサーチと共有できない
・管理画面で確認できる期間が狭い
・入札単価による全体の配信シェア率が分からない
機能的なデメリットはほぼ無い
管理画面上での「使いづらい」など利便性によるデメリットが中心で、配信機能自体にはデメリットはほとんどありません。GDN・YDNに共通するデメリットとしては、1人のユーザーに対し何度も広告表示を行う場合もあるため「しつこい」という印象をユーザーに与えてしまう危険性があるということです。
獲得効率が悪い場合は『フリークエンシーキャップ』を活用しましょう。1人のユーザーに対し、日/週/月ごとに何度までバナーを表示するか設定することができます。
また、ページの下部などスクロールしないと見えない位置に表示されるバナーも“1インプレッション”にカウントされるので、全インプレッションの半分以上は「実際見られていない」との調査結果もあります。ですが、サイト内のどの位置に表示されたインプレッションなのかの判別は現状できません。
対策としては、獲得効果の悪化がみられるようであれば、訪問からの日数を短く設定したリストに切り替えることで改善できることがあります。GDNであればドメインごとに効果が悪いサイトを除外するなど細かい運用調整をしていきましょう。
前回記事『リターゲティング広告で更なる効果を引き出す6つのコツ』も合わせてご確認ください。