アメトーークでWWE芸人が取り上げられることになりました!私自身“にわかファン”ではありますが、知人から「WWE好きって言ってたよね?」と聞かれることが増えたのは非常に嬉しいことです。この特集を機にWWEに興味を抱いてくれる人がもっと出てくるのではないかという期待も込めて、今回は馴染みのない人でもWWEを楽しめるようになるコツを紹介します。
目次
その1.男前ってだけでいいじゃない! まずはお気に入りのレスラーを見つけよう
すべてのスポーツ観戦において言えることですが、やはりお気に入りの選手がいるのといないのとでは面白みが大きく変わってきます。特にWWEはレスラー同士の確執や結束などの人間関係が、試合のストーリーとして前面に押し出されています。その上、その関係性が常に変動していくので月9ドラマばりにストーリーの波があるわけです。昨日まで仲良くタッグを組んでいた相方が急に敵と一緒に襲い掛かってくるなんてこともあるので正直展開についていけないことも多く、誰一人として感情移入できない状態だと“クレイジーなテンションの筋肉たちがとにかく暴れている”という画面にしか見えなくなってしまいます。
というわけで、感情移入できる―つまり試合を見たいと思える―レスラーをもつことがWWEを楽しむ近道だといっても過言ではないと思います。
じゃあそのお気に入りはどうやって決めればいいのかということになりますが、最初はヴィジュアルで選んでしまった方が楽しいと思います。見た目が華やかなレスラーはそれに比例して(?)演出も派手になる傾向があるので、単純に目や耳で楽しめるキャラクターが多いのです。参考までに、私が「男前だな」と思うWWEレスラーをご紹介します。
・The Rock
The Rock(ドウェイン・ジョンソン)は「ハムナプトラ2」「SPEED」など知名度が高い映画に出演しているので、俳優として見かけたことがあるという方は意外に多いのではないでしょうか。現役ではないものの過去のWWE歴代イチの男前だと思うので挙げさせていただきました。技を決める前のパフォーマンスがまったく意味をなしていないこともある(ダウンした相手をそっちのけでロープワークをするが、ロープの反動を一切使わずに攻撃したりする)のですが、片眉を上げる所作が最高にセクシーなので、まったく嫌な気持ちになりません。
・ランディ・オートン
ヒール(悪役)っぽい言動の割に、よく見ると童顔なところが憎めないランディ・オートンは試合の見応えも抜群です。強いんですよね。当然ながら、強いレスラーはそれだけでカッコいいですし、応援し甲斐があるのでおすすめです。
・ロマン・レインズ
ロマン・レインズ(ジョー・アノアイ)は男らしい正統派イケメンで、人に話す時は大体「ワイルド系オーランド・ブルーム」だと説明します。レインズがリングにいると画面が華やぎます。また、常に誰かに因縁をつけられる不憫なポジションなのでどうも応援したくなります。
一人でも応援できるレスラーができたら、そのあとは自然と自分の好みがでてくると思います。「ジェフ・ハーディーのようにアクロバティックなレスラーが好きだ」とか「セザーロ(クラウディオ・カスタニョーリ)のような小細工なしのパワー系は見応えがある」など言い出したら、もう立派なWWEレスラーファンです。
その2.レスラーのキャラは“入場シーン”を見れば一瞬で理解できる
先ほどは“とりあえず”男前をおすすめしましたが、どれもしっくり来なかったという方はYouTubeで入場シーンの動画を漁ってみるという方法もおすすめです。入場シーンはレスラーの個性が非常に細かく反映されています。
・笑えるほどダイナミックな登場をする「ジョン・シナ」
WWEの顔でもあるスーパースター、ジョン・シナの入場シーンは豪華で会場も一気に盛り上がります。30人以上のジョン・シナ(風の格好をした男性たち)が二列に並び、その間の花道をジョン・シナが走ってくるという演出には笑いました。「意味は理解できないけどとにかく大規模」という大味の演出は、やはり海外のプロレス団体ならではの魅力だなあ、と思います。
※見直して見たら30人どころじゃなかったです
※シナ集団への敬礼のあとのダッシュは確かにホットだと思います
・登場すると必ず相手がうろたえる「アンダーテイカ―」
極端な話、入場曲がカッコいいというだけでそのレスラーを気に入るということもあります。“もう絶対勝てる気がしない登場”で有名なのがジ・アンダーテイカ―です。会場が暗転して鐘の音が鳴ったら彼が来る合図で、その演出がはじまると必ず相手レスラーがうろたえ始めます。どんなに相手が騒いでもアンダーテイカーは静かにゆっくり迫って来るので、その威圧感で大体相手の勢いが急降下します。この動画でもわかると思いますがアンダーテイカーが出てくると会場の雰囲気もガラッとかわります。
※冒頭で鐘の音がなったあと、アンダーテイカーが登場するのは2:31くらいです
※3:46の表情にアンダーテイカーのすべてがつまってます
※4:20くらいに相手のレスラーを守りたくなってきます
ちなみに、アンダーテイカーは長期休業ののちに「不良親父」というギミックに変更した時期もあります。私は”伝説の墓堀人”である彼のファンなので、不良親父の装い&バイク登場にはかなり違和感を感じましたが、現地のファンには結構好評だったようです。興味がある方はそちらも検索してみてください。
・ついポーズを真似したくなる「ブライアン・ダニエルソン」
決めポーズや決めフレーズがあるレスラーの登場はやはり盛り上がります。現在はもうWWEを引退されていますが、私が好きだったのはブライアン・ダニエルソンの決めポーズです。とにかく「YES!」と叫びながら両手で人差し指を上げる、というだけのシンプルなもので、これをブライアンの登場時に真似すると妙に楽しいんです。ブライアンが入場した際は会場全体が「YES!」と叫ぶのでその一体感でも気持ちよくなります。会えた喜びだとか、試合への高揚感だとか、応援の気持ちだとか、さまざまな感情をたったひとつの動作で伝えられるから、決めポーズって真似したくなるんでしょうね。
ブライアンは余命わずかな少年のファンをリングに招待したことがあり、その時も二人で「YES!」のポーズをとります。その姿をみた少年の父親は「この数年ではじめて息子が病気であることを忘れていた。ブライアンは息子と過ごす時間(おそらく余命のこと?)を引き延ばしてくれたように思う」と話していました。プロレスは他の格闘技と違って試合ごとにストーリーが設けられているからこそ、レスラーやリング上の出来事に夢を抱く幼いファンも多いのでしょう。
※サムネイルもふたりで「YES!」ポーズをしています
その3.死んだはずの弟が生きていた? 無駄に濃いキャラ設定(&ギミック)で楽しむ
WWEならではの面白さといったら、レスラーの独特なキャラ設定です。大きくは“ベビー(正義)”と“ヒール(悪)”に二分されるのですが、スーパースター級になると同じヒール役でも一人一人の設定が濃くキャラはまったくかぶりません。ここでは無視できないインパクトがあるキャラ設定のレスラーとして、WWEの“破壊兄弟”を紹介します。
・アンダーテイカー(兄)
<アンダーテイカーを4行で説明>
- WWEの恐怖の象徴とされている(白目をむいた顔が本当に怖い)
- マネージャーの持つ“金の骨壺”による魔力でいくらでも復活できる
- 相手に幻覚を見せることができる
- 腹違いの弟が生まれたことを知り、母親への怒りから自宅に放火
- アンダーテイカーの腹違いの弟“赤い怪物”
- 過去の放火された記憶のせいで、常に憎悪の念を抱いている
- 運営部長だった時期でさえも、突然レスラーに戻り暴れ出す
- ディーバとの昼ドラ展開で“赤い怪物”から“悩める怪物”へ
上記からもわかるようにアンダーテイカーは非常にギミックが多く、(迷走していた時期もありますが)いまだにそれを貫き通しているレスラーです。彼が大きく露出し始めた当時は“喋らない恐怖のレスラー”という設定だったそうです。そのためポール・ベアラーというマネージャー(2013年死去)が側に常駐し、彼の通訳をしていました。このポール・ベアラーもアダムスファミリーのような風貌で怖いです。
アンダーテイカーは名前の通り“墓堀人”という設定で、相手を棺桶にいれた方が勝ちという謎の“棺桶マッチ”というものもあります。わけのわからない設定を背負った彼がなぜ人気かというと、ギミック負けしない強さがあるからでしょう。208cmという大柄な体型に似合わず動きが身軽ですし、大技を決めた時のパワーは体格通りの衝撃があります。故に、レッスルマニア(世界最大のプロレス大会)での不敗神話も頷けます。(※1)
入場シーンの例としてもとりあげたアンダーテイカーですが、あのインパクトある演出も、とんでもなく濃いギミックと無敗の称号が相まって生まれたものでしょう。だからこそいまだに“WWEの恐怖の象徴”とされています。
少々リアル話になりますが、アンダーテイカーも今年で51歳。WWEの現役レジェンドをリアルタイムで見たい方は、しっかりチェックしておいてください。現在も出場回数は非常に少ないですよ!
(※1)2014年にブロック・レスナーに敗れ無敗記録は途絶えましたが、そこまでの21戦不敗もかなり凄いことで、いまだに伝説レベルです
・ケイン(弟)
<ケインを4行で説明>
アンダーテイカーの存在感が大きくなった後に登場したのがケインです。ケインの恐怖兄弟としての初登場は、アンダーテイカーのマネージャーであるポール・ベアラーがアンダーテイカーを裏切り秘密の過去を語り出す、というところからはじまります。曰く、アンダーテイカーが異父兄弟の存在に怒り、衝動的に実家に放火し逃走した過去があるとのことで、その際に両親と弟は他界したと話し出します。ところが弟が奇跡的に生きていたという事実が発覚し、当の弟であるケインがリング上に登場します。放火された際にできたという設定で、火傷をモチーフにした赤いコスチュームを着たケインは復讐に燃える“赤い怪物”として紹介されました。兄への復讐というギミック故に破壊的な行為が多く、巨体の兄弟が並ぶ迫力は相当なもので、そんなタッグについた名前が“破壊兄弟”です。復讐劇というギミックを背負っての2人の試合は幾度か繰り返されるわけですが、その演出の凝り方には一種の芸術性さえあります。アンダーテイカーの項目でも触れたように“棺桶マッチ”が繰り広げられることになりますが、相手を棺桶にいれた後にガソリンと火を放ち消火活動で会場が騒然となる回もありました。(私はリアルタイムではなく動画でみました)消火後に棺桶を開けても誰もいない、というマジックショーとしての完成度にも拍手しました。
また、ケインはヒールの怪物というキャラだけでなく、昼ドラのようなアングル(リング外における筋書き)に巻き込まれた時期もあります。WWE自体、スーパースターとディーバ(女性レスラー)の恋愛ストーリーは度々発生するのですが、怪物キャラであるケインはディーバであるリタ(エーミィ・ダーマス)の奪い合い、強制結婚、妊娠、試合による流産といったドロドロのアングルにより、呼び名が“赤い怪物”から“悩める怪物”に変わった頃もあるのです。
ちなみに、ケインを検索エンジンで検索するとサジェストで「WWE ケイン いい人」と出ます。ギミックやアングル上は恐怖の怪物とされていますが、プライベートでは紳士なのでしょう。そう考えると、改めてWWEの世界観の徹底、またそれを支えるレスラー個人のパフォーマンス力には脱帽です。
キャラがはっきりしているということは、言い方を変えれば童話のように“わかりやすい世界観である”ということでもあります。WWEはここに力を入れているからこそ、ムーンサルトなどの大技しか知らない“にわかファン”の私でも楽しく見れるのだと思います。ベビー役とヒール役、それぞれの入場シーンとマイクパフォーマンスによるぶつかり合いだけでも“立派な舞台”として成り立っているわけです。特にWWE所属レスラーはマイクパフォーマンスが巧みな人が多いので、最初はそれを見ているだけでも十分楽しめていた記憶があります。
その4.理不尽なコメントも! 試合に飽きたら実況者の声を聴いてみる
「お気に入りのレスラーができればあとは観戦を楽しむだけ」と言いたいところですが、そうもいかない時が必ず訪れます。濃すぎる設定や演出の数々に少し疲れる瞬間です。そんな時は“レスラーそっちのけで実況者の字幕をひたすら見る”ことをオススメします。
そもそもWWEの実況自体(たまに口が悪いですが)ユーモラスで聞き応えがあります。レスラーが本気のぶつかり合いをしていても、それを他所にブラックジョークを言っていたりと、会場と実況者の温度差は実にバランスがいいのです。
しかし、WWEの実況者のなかにはレスラーと同じぐらい熱くなり、当然のように“偏った考え”の実況をする人もいることが面白かったりします。その例で言えば、RAW(番組名)のマイケル・コールがヒールターン(ベビー役からヒール役に変わること)した実況者として有名です。彼ももともとはベビー役を応援し、ヒール役に辛口なコメントをする普通の実況者でした。しかし、色々な経緯の末に一人のレスラーの信者となり、そのレスラーの優勝のために試合妨害することもありました。その件でレスラーに殴られたりもしています。
WWE所属の実況者はその実況内容がもとでリング上に引っ張り出されたり、つかみかかられたりすることもあります。実況者も“傍観者”的なポジションでなく演出の一員とされている部分が少なからずあり、突然アングルに巻き込まれることもしばしば。WWEの番組ごとの実況者を簡単に覚えておくとさらに試合が面白く感じられると思いますよ。
さいごに。にわかだって立派なファンである!
話の途中でも何度か触れたように、WWEの魅力はなんといっても観客、レスラー、実況者をはじめとした出演者全員で形成される豪華なエンターテイメント性です。
プロレスと聞くとコアなファンしか楽しめないようなイメージがあるかと思いますが、決してそんなことはりません。ひとつでも技が「カッコイイ!」と思えば、ひとりでもレスラーの入場が「素敵!」と思えば、ひとつでも試合が「面白い!」と思えれば、それだけで“ファン”と言っていいと私は思います。
番組をきっかけに社内でもWWEファンが増えますように。
<余談>ディーバ戦で休憩挟む方が多いですが「勿体ないです」
私の知人はディーバ戦が始まるとトイレ休憩を始めたりするのですが、ディーバ戦を見逃すのってとてももったいないと思います。かなり見応えあります。一度ディーバ(女性レスラー)戦で試合前に喧嘩をしており、何事かとマイクパフォーマンスの字幕に注目してみたら「誕生日に贈られた絵画(対戦相手が描いたもの)が下手過ぎて腹が立った」という謎の内容でした。文章で書くと間抜けに聞こえますが、ディーバ達は物凄い形相で言い合っています。あまり大々的に取り上げられる機会は多くないのですが、ディーバ戦が行われていた時はその前後のやり取りも見てみてください。男性レスラーやスーパースターたちとは全く違う種類の小競り合いが非常に楽しいですよ!!
個人的には、元ダンサー特有の身軽さがあり、技もパワフルなナオミのパフォーマンスが一押しです。グラマーな女性が苦手な方はAJ・リー(2015年WWE引退)をおすすめします。華奢な風貌に似合わず、試合でもマイクでもとにかく相手に噛みつく可愛い(過去)ディーバ王座です。