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『ドラクエ5』の嫁論争、ビアンカとフローラ

更新日:2015.08.20

世の中にはさまざまな対立と論争があります。
20~40代ぐらいの方であれば『ドラクエ5の嫁論争』というのを聞いたことがあるのではないでしょうか。
きのこたけのこ戦争に代表される不毛な争いのひとつに数えられる「ビアンカフローラ論争」

今日はこの論争について書きたいと思います。

ビアンカフローラ論争とは

1992年に発売された『ドラゴンクエストⅤ』
この「ドラクエ5」では主人公が結婚するイベントがあり、そこでビアンカとフローラのどちらかを花嫁に選ぶことが出来ます。
勝気で面倒見のよい姉御肌のビアンカと、優しく大人しいお嬢様のフローラ。この二人のどちらを選ぶか、という論争です。

どちらも相手方の女性を貶めることで優位に立とうとする傾向にあるため、不毛な言い争いとなることが多々あります。ドラクエ5やっていないのに論争に巻き込まれ「聞き飽きた」という方も多いかもしれません。

ただ、この不毛な争いは今後『ドラゴンクエストⅤ』というゲームが世間から忘れられるまで続くことでしょう。

前提

僕はフローラ派ですが、キャラクターとしてはビアンカも好きです。
一晩、嫁選びに悩んだこともあります。ドラクエ5はドラクエシリーズで一番好きな作品で、現在までにリメイクも含め4回ほどクリアしています。

どちらを選ぶかは最終的に感情により決定されることなので、フローラ選びを強要するつもりはありません。また、どちらが好きかではなく、どちらを選ぶべきかを考えて行きます。

まずは「選ぶ理由」として取り上げる人が多い論調について紹介していきます。

ビアンカ派とフローラ派の論調

論調1.多数決としてはビアンカ有利

民主主義をこの論争に当てはめるのであれば、ビアンカ派の大勝に終わります。
事実としてプレイヤーの多くがビアンカを選んでいますし、今まで語った人はほとんどがビアンカ派でした。
スクウェア・エニックスが行ったドラクエシリーズキャラ人気投票でも、ビアンカは総合2位・女性キャラ1位という人気を見せています。有志によるドラクエキャラ人気投票でも、ビアンカは軒並み上位につけています。
僕個人としてもビアンカは好きなキャラクターですし、ビアンカ派が多いのには特に疑問はありません。

ただ、この論争は「どちらが魅力的なキャラクターか」ではなく、ドラクエ5のプレイヤーが「どちらを選ぶべきか」に焦点を当てた方が良いと考えています。理由は単純で、好き嫌いの話なら議論にならないからです。
キャラクターの人気の差というのは関係ありません。

論調2.フローラを選んだほうが攻略が楽

お金や優れたアイテムが手に入るほか、覚える魔法を比較するとフローラはビアンカよりも戦力として優れています。
なので特にどちらのキャラにも思い入れがない場合、これを理由にフローラを選ぶ人がいます。

ただ、攻略が楽になるというのは花嫁を選んだ後の結果論であり、花嫁選びの時点ではあまり関係のないことです。
周回プレイや攻略情報を見てからの結論ですから、これはフローラを選ぶ理由とは考えません。

また、ゲームキャラクターとはいえ「嫁を道具として考える」ことには抵抗があります。
僕はフローラ派ですが、この理由でフローラを選ぶ人とはビアンカ派よりも分かり合えない気がします。

基準3.ビアンカは独身を貫くがフローラは他の人と結婚する

フローラを選んだ場合、ビアンカは独身のままスナックのママのような仕事につきます。

ビアンカを選んだ場合、フローラは自分を想ってくれる主人公以外の男性と数年後に結婚します。

これも未来の話なので花嫁選びの時点ではあまり関係ありませんが、それぞれのキャラクターの性質は花嫁選び前に分かります。
主人公に選ばれるか不安で眠れないビアンカ、運命の日の前日でも眠れるフローラ、という対比が描かれているからです。

また、フローラには彼女を想ってくれる男性がいることが結婚前から分かっていますが、ビアンカは親父さんが寝たきりになっている境遇にあります。
「主人公しか幸せにできない人」と「誰かが幸せにできる人」という差があります。

これがあるから素直にフローラを選べず、迷ってしまうことがあるのです。

論調4.公式がビアンカ推し

ドラゴンクエストシリーズ生みの親にして、ドラクエ5も手がけた堀井雄二さんもビアンカ推しです。
2011年にニコニコ生放送に出演した際、「シナリオはビアンカを選ぶようにつくった」と語ったそうです。

以来、ビアンカ派の方はこのこともビアンカを選ぶ理由に挙げます。
これは僕の中で信じられない一言でした。
後述しますが、ビアンカを選ぶように作られているとは思えません。

なぜフローラを選ぶべきと考えるのか

他にもキャラを貶すような意見も多いのですが、ここでは省略させていただきます。

改めて前提を繰り返しますが、僕はどちらが好きかではなく、どちらを選ぶべきなのかを考えていきたいと思っています。

僕が考えるフローラを選ぶべきだとする理由は「主人公の行動に説明がつく」からです。
ビアンカを選んでしまうと、主人公の行動が途端に許せないものになります。

個人的見解1.「主人公=プレイヤー」ではない

ドラゴンクエストシリーズの主人公というのは、基本的にできるだけプレイヤーの分身であるよう作られています。
自分からセリフを喋ることはなく、意思表示も「はい」と「いいえ」だけで表現されています。
プレイヤーたちは主人公に自分を重ね、波瀾万丈な人生を生きていくわけです。

ただ、ドラクエ5では「ビアンカかフローラを花嫁に迎えなければならない」という強制力が働いています。これが始まるのは「フローラの花婿候補として指輪集めに参加しなければならない」というところからです。この花婿候補としての活動に関しては主人公がプレイヤーの手を離れて、自らの意思(シナリオ)で動いているのです。

最終的な決断をくだすのはプレイヤーですが、どちらを選ぶべきかというのはプレイヤーの好みとは関係ありません。

個人的見解2.主人公は自らの意思で花婿選びに参加した

サラボナの町ではルドマン(フローラの父)が、かわいい娘をすぐれた男に嫁がせようと花婿選びの説明会を行っています。主人公はそこに参加するわけです。

ここまでは主人公の意思はさほど介在せず、たまたま天空の盾の情報を聞いてやってきた青年である可能性があります。
ただ、主人公はそこで幾つかの情報を得ます。

・入手困難な2つの指輪がある
・2つの指輪を手に入れた人物にフローラを嫁がせる
・フローラを嫁にした人物に「天空の盾」が譲られる

僕が考えるまっとうな人間はフローラと結婚する意志がないのであれば、平然と指輪探しに出かけたりはしません。
フローラと結婚する意志がないのであれば、言うべきことがあるのではないでしょうか。

「自分は伝説の勇者を探している」
「そのために天空の盾がどうしても欲しい」
「フローラと結婚する意志はない」

ゲーム中にはこういった交渉をする描写はなく、その意志を伝えられない何らかの制限があるわけでもありません。遅くとも、一つ目の指輪を見つけて報告に行った時、結婚しないつもりなのであれば絶対に告げなければいけないことです。
ただ、主人公はこういったことを言いません。

主人公がまっとうな人間であると仮定するなら、主人公はフローラと結婚する意志を持っていたということです。

僕は最初にプレイした小学生のころ「主人公はこの人と結婚するつもりなんだな」と素直に思いました。そして、それを叶えるために主人公の指輪集めを手助けしたんです。
「ビアンカと結婚させる」なんていう感情は一切ありませんでした。ビアンカやベラやマリアは、とっくに過去の人です。

もし主人公に意志がなく、指輪集めに参加せずクリアできるなら、僕はマリアを選びたいです。

個人的見解3.主人公に「クズ」の冠を戴かせるかどうか

フローラとルドマンの計らいにより、主人公はどちらを選んでも良いことになります。

ただ、これまでフローラと結婚するために主人公は死線をくぐってきたんですよ。
ライバルを蹴落として勝ち取ってきたフローラを嫁にする権利です。

それなのに、最終的にその手伝いをしてくれた幼なじみに落ち着くって、フローラやルドマンやライバルたちに対する裏切りだと思うんですよね。
命を危険に晒してまで結婚しようとしていた相手ですよ。
すれ違いや、価値観の違いや、大きなケンカでもあれば分かります。そんなこと一切無いのに、違う人を結婚相手に選んでしまうって人としてどうなんですか。
フローラやルドマンが許してくれても、僕は主人公を許せません。

だから僕はいつだってフローラを選びます。

GTAシリーズなどクソ野郎が主人公の楽しいゲームもありますが、ドラクエの主人公はそうじゃないと思うんです。
たとえば自分の息子がこんなことしたら、思いっきり殴り飛ばす親は多いと思うんですよ。
パパスだって怒りますよ。
一生背負うほどの十字架じゃないとは思いますが、本気で「申し訳ない」という気持ちを持って謝罪するべきことです。

仮に天空の盾しか目当てじゃなかったなら、やり口が結婚詐欺師と同じです。
主人公がクズじゃないルートは、フローラ以外にありえません。

個人的見解4.結論、主人公はフローラに惚れている

主人公がクズでないのであれば、主人公はフローラに惚れているわけです。
それが僕が主人公に望むことです。
プレイヤーが「ビアンカが好き」だとか「フローラが好き」だとか、正直なところあまり関係ないと思っています。

どちらが良い女かとか、どちらが得だとか、どちらが子どもの見た目が良いとか、どちらが最終的に丸く収まるかとか。
そういうのは最低限のルールを守れてから言えることです。

主人公はフローラに惚れている。
だから主人公はフローラを選ぶべきだ。

異論はあると思いますが、僕はこのように考えます。
主人公はモンスターにも好かれるイイヤツなんです。

おわりに

ドラクエ5は発売から23年経った今でも、こんなにも無駄な長文が書けるほど面白いゲームです。
社内でもビアンカかフローラかで軽く白熱しました。
未プレイの方は今からでもプレイしてみてはいかがでしょうか。
最近はデボラという三人目の花嫁候補がいるので、更に迷うことになると思います。

次にリメイクすることがあるなら、事前に「フローラと結婚する気はない」ことを伝えるイベントを入れて欲しいです。そうしたらやっと僕はビアンカやデボラも選ぶことができます。
ただ、その時には四人目の花嫁候補としてマリアも追加してくれると幸せです。

というわけで主人公はフローラを選ぶべきだと思いますが、僕個人としてはマリアを選びたいです。
マリア派です。

ヘンリーがうらやましい。